追跡型GPS発信機で社員や社用車を効率よく管理する
経営者にとって社員をいかに効率よく管理するか、これは利益にも繋がる大切な問題です。しかし、社員の管理はとても難しいもので、時間もお金もかかってしまいます。そんな中で考えられたのが追跡型GPS発信機で社員を管理できないかということ。これは今までには無かった画期的な社員の管理法なのです。
追跡型GPS発信機をご存知の方も多いとは思いますが、簡単に説明しておくと衛星を使った位置情報特定システム。ようは追跡型GPS発信機を社員に持たせておけば、いついかなる時でも行動を追跡することが可能となります。これによって配送や運送といった外回りの多い社員を一括で管理して、緊急の要件に近くの社員を向かわせることもできるでしょう。
今までは、どの社員が近くにいるかの把握も大変だったので、緊急の要件があっても対応が遅れがち。しかし追跡型GPS発信機を使えばスムーズな対応を実現し、会社の利益も上がることは目に見えています。
これと同時に社用車へのGPS設置も普及しています。社員に持たせる煩わしさも無いうえ、紛失の心配もありません。しかも、万が一社用車が盗難にあった時も安心。追跡型GPS発信機がついていれば、即場所を割り出して追跡できます。もちろん、警察にGPS追跡情報を提示して犯人逮捕に協力することも。まさに追跡型GPS発信機ならではでしょう。
社員や社用車の管理が難しく、毎日のように頭を悩ませている経営者のみなさん。これからは追跡型GPS発信機での効率的管理が当たり前の時代です。コストと利益、どちらが得かを考えて導入を検討してみてください。
ただし、プライバシー侵害にならないように、GPS追跡は業務のための利用に限定されるべきです。あくまで会社の業務効率化や労務管理のための必要性から認める範囲で利用すべきです。たとえば、会社の就業時間と全く関係がない土日などにまで行動を監視することは問題といえるでしょう。また、追跡型GPS発信機を使った社員管理は、監視されると社員に嫌がられる可能性があるので、しっかり社員に説明しましょう。
米カリフォルニア州で36歳の女性が、会社にGPS追跡アプリを携帯にダウンロードするよう命じられましが、上司に常時監視されていることに不快感を感じアプリを削除したところ、解雇されてしまったという。女性は会社を相手取り、給与損失分50万ドルの支払いを求める訴訟を起こしています。
追跡型GPS発信機で車両運行管理する
GPSと言えば、今や自動車のナビはもちろん、スマートフォンや防犯、渡り鳥の追跡調査にまで利用されている技術です。
現在はアメリカの軍事用衛星の信号を民生用にグレードダウンして利用していますが、日本でも独自にQZSS(Quasi-Zenith Satellite System, QZSS)
と呼ばれる準天頂衛星システムを構築しようとする計画があります。国産GPSの計画です。
これにより、高層ビルの谷間など衛星からの電波の届きにくい場所での精度向上が期待出来ます。
今回はGPS追跡と車両運行管理について、お話ししようと思います。
車両運行管理というとちょっと日常生活から遠いイメージですが、身近な例では、バスの待ち時間表示があります。
路線バスを待っていると、バス停に「到着まで○分」と表示されているのを目にする事があります。
あれが正に車両運行管理の一つなのです、各路線を走っているバスに追跡型GPS発信機を付け、
それぞれのバス停までの距離とバスの走行速度、交通状況などいくつかの要素をシステムに取り込んで
バス停までのおおよその到着予定時間を計算しているのです。
バスの到着予定時間が分かる事でお客さんの待ち時間のイライラ解消に役立ち、複数の路線が乗り入れている場所では、
早く到着するバスを選べるなど利便性向上に貢献しているのです。
公共交通機関のバス以外にも、塾などお子さんの送迎バスの運行状況を追跡しスマホアプリを通じて親御さんたちにお知らせするサービスも
あります。お子さんが降りるはずの場所でバスを長く待つ事もありませんし、お子さんがバスから降りて一人寂しくする事もありません。
バス以外に追跡型GPS発信機を利用している身近な車両にタクシーがあります。
ひと昔前のタクシーは、迎えに来てもらうためにまず利用者がタクシー会社に電話、タクシー会社の配車係りの人が電話を受け、
無線発信機で全てのタクシーに利用者付近にいるか問い合わせ、運よく利用者の付近にタクシーがいればそのタクシーが利用者の所まで
走る、というかなり手間のかかるものでした。
最近はその手間をスマホのアプリが解消しつつあります。まだ導入が大きく進んではいないものの、その仕組みはとてもスマートです。
利用者はタクシーに乗りたい時に、アプリを起動。アプリは利用者の位置情報(追跡型GPS発信機)をタクシー会社に通知。その通知された内容から
付近を走行中の追跡型GPS発信機搭載済みタクシーを自動的に割り出し、タクシーを利用者の元へ追跡・誘導します。
また、利用者が今いる場所とタクシーで行きたい先を入力すると、タクシー料金を概算で算出する機能もあります。
さらに、タクシー料金の支払いもスマホで可能なアプリもあり、お釣りの受け渡しの不便さは過去のものとなりました。
このタクシーの追跡型GPS発信機による車両運行管理のメリットについて触れておきましょう。
メリットは利用者、タクシー会社、タクシードライバーの三者にそれぞれあります。
まず、タクシー利用者は迎えに来てもらう際に電話をかける事が不要になりました。アプリの起動で簡単に自分の位置と行き先を伝えられます。
また、街中で流しのタクシーを利用する場合も非常にスマートです。路上で手を振る必要はありません。アプリを起動して待つだけです。
タクシーに自分を追跡型GPS発信機を利用して追跡してもらうイメージでしょうか。
行き先を改めて伝える必要もありません。事前にアプリからドライバーさんに通知済みです。
次にタクシー会社のメリットです。配車係りの人的コストが省力化出来ます。アプリとその情報を追跡管理するサーバーが取って代わります。
電話と無線のやり取りで配車を管理していた時代は終わり、静かにサーバーがタクシーの運行管理を効率的に行ってくれます。
また、空車を追跡型GPS発信機で追跡管理する事により効率的な配車が可能になります。
三番目にタクシードライバーさんのメリットですが、無駄のない業務運行が可能になりました。空車のまま何時間も走り続ける事はありません。
GPS追跡端末が最適な運行方法を通知してくれます。ドライバーさんの位置情報からお客さんのいる場所までをナビゲートする事も可能でしょう。
オンデマンド・タクシーとでも呼ぶべきサービスです。
このように追跡型GPS発信機によるタクシーの車両運行管理はメリットが目立ちますが、一方で課題もあります。
それは普及率の問題です。タクシー業界には大きな会社から個人タクシーまで様々な規模の業者が存在します。
追跡型GPS発信機を利用した車両運行管理システムの導入・運用には一定のコストが掛かります。このコストの問題が普及率を妨げる
ひとつの要因です。ただ、このタクシー配車システムが普及すれば利用者の利便性は向上し、タクシー会社の効率も向上しますから普及向上の
傾向はゆっくりですが止まる事はないでしょう。普及すれば量産効果でシステムの導入・運用コストが下がり、一層普及に拍車がかかります。
日本ではタクシー利用者とタクシー会社、ドライバーと三者を巻き込んだ車両運行管理ですが、海外では様子が違います。
利用者とドライバーが直結しています。
どういう事でしょう?
まず、今いる場所と行きたい場所をスマホアプリに入力します、すると同じアプリを利用している近くを走っているドライバーに追跡型GPS発信機の位置情報が届きます。
そこで、最初にアプリに入力した人のそばにドライバー(実はプロのタクシードライバーではない)がクルマを寄せて、その人を乗せ目的地まで
走るのです。ここでも追跡型GPS発信機が威力を発揮します。乗せてもらった人は「お礼」という形で何がしかの対価をドライバーさんに渡す、という仕組みです。
日本では特別な免許を持つ人以外がお客さんを乗せて走る事は法律で禁止されているので、実現していませんが、海外では既に
個人同士でクルマを提供しあうサービスが行われています。もちろん、プロのタクシードライバーから「仕事を奪うな」とクレームが上がっています。
スマホという個人と個人を結び付けるツールとGPS技術が生んだ新しいシェアサービスの形態です。
追跡型GPS発信機を使用した車両運行管理は利便性だけではありません。安全確保や運行の追跡にも一役買っています。
例えば、長距離トラック・バスの運行です。時には何百キロもの長い距離を昼夜を問わず運行しなければならない長距離ドライバーに
とって安全確保は大きな命題です。
定められた休憩をとっているか(定められた場所・時間で止まっているか)、正しいルートを走行しているか、法定速度を守っているかなどがリアルタイムで
把握・追跡できます。
休憩をとっていないドライバーには休憩を促し、逆に長時間同じ場所で止まっている場合には不測の事態も想定した対応が取れます。
また、交通事故や悪天候などの情報と組み合わせて渋滞回避や、より効率的で安全なルートの提示も可能です。
スクールゾーンでの安全運転、事故多発ポイントでの注意喚起等GPSの位置情報がもたらす恩恵は様々です。
車載の各種センサーと組み合わせれば、急発進・急加速への警告、アイドリングストップによる温室効果ガスの抑制、燃費向上にも役立ちます。
安全管理や運行追跡だけでなく、勤怠管理や輸送・配送管理まで追跡型GPS発信機の位置情報が車両運行管理を飛躍的に効率化しました。
従来はデジタルタコメーターのデータや勤怠の確認のため、ドライバーと車両が管理者のいる事務所まで戻る必要がありました。
それが、長距離トラックの走行記録や高速バスの勤怠管理も遠隔地であっても携帯電話とGPSの電波の届く場所であれば特別な装置なしにスマートフォン
だけで管理可能です。
また、配送管理も予め配送予定地点を登録しておけば、効率的な配送ルートを指示してくれます。後は実際の交通状況をリアルタイムに
反映してドライバーに伝えればよいのです。配送ルートの効率化が進めば、配送コストの削減、サービスの向上に繋がります。
タクシー、長距離バスやトラックといった比較的広域な移動範囲を持つ車両だけが運行管理の対象ではありません。
土木工事現場など半径数キロほどの範囲を移動する工事用車両の運行管理にも役立っています。
例えば、掘削現場から残土や廃棄物を運搬する車両に間違った場所で積み入れ・廃棄をしないよう追跡管理出来ます。
また、工事現場から一般道へ出る車両を追跡しドライバーへ注意喚起したり、工事車両同士が接近した場合の警告を発信する事も可能です。
さらに、山間部など道が狭い地域では大型車両のすれ違いを円滑にする効果もあります。
これらには特別な装置は必要ありません。アプリをインストールしたスマホやタブレットとパソコンで十分管理出来ます。
また、工事現場に立つ人もスマートフォンなり通信機器を持つ事で、工事車両との円滑な対応が可能です。
人が悪天候下に工事車両を待って立ち続ける事も、車両を待たせて工事を遅らせる事もありません。
追跡型GPS発信機自体が小型で安価に入手できるようになった恩恵といえます。
実際に先の東日本大震災後、災害廃棄物処理において事業車両と運行する管理監督者にタブレット型端末を配備し、
円滑な運行を行った事例があります。追跡型GPS発信機の位置情報のみならず、双方向通信が可能になった時代だからこそ実現した技術です。
公共交通機関、工事車両の他に追跡型GPS発信機を利用した車両運行管理を行っている業種があります。それは物流業界です。
一般消費者(利用者)からは「荷物がいつ届くか?」という荷物追跡に目が行きがちですが、荷物ではなくもっと大きな単位、荷物を運んでいるトラック単位
で位置情報を運行管理に使用しています。トラックの運行状況を追跡型GPS発信機を使って追跡し、リアルタイムに把握、交通状況と照らし合わせ到着予定時刻
を割り出します。そうする事でムダのない貨物の引き渡しが可能になります。トレーラーやコンチナ輸送などに有効です。
1回の運行で多大な燃料を必要とする大型車両ですから、少しのムダも省いてコスト削減に貢献するのです。
これまで、公共交通機関や運輸、工事車両といった側面で車両運行管理についてお話ししてきました。どれも人々の生活を
より便利で快適にするための技術です。
実は、利便性以外に人の命に係わる分野でも利用されています。
それは何か?
緊急車両。そう救急車です。
救急車が現場から病院に向かう際に、現場近辺で患者・怪我人を受け入れ可能な病院を探すためにGPS追跡の位置情報が役立ちます。
受け入れ可能な病院が見つかれば、そこに向かう途中の救急車の位置情報の追跡結果が病院側に伝達され迅速な受け入れ態勢が整います。
一刻を争う救急現場で追跡型GPS発信機を使用した車両運行管理技術が人の命を救っているのです。
警察機関と連携すれば、緊急車両の通行ルートの交通規制(信号操作や通行止めなど)も可能です。
実際に「現場急行支援システム(FAST)」という緊急車両用の運行管理が導入されています。
交通規制という点では、バスなど公共交通機関の運行を円滑・効率的にするために信号操作や道路の時間通行規制(バス優先レーンなど)
に1990年代から運用開始され、今では日本各地で導入されています。
現在は実験中の技術ですが、自動運転技術も車両運行管理の一環と言えます。
自動運転には追跡型GPS発信機を利用した位置情報が欠かせません。
現在位置と目的地、走行予定ルートの状況、実際の交通状況をネットワークで連携させ安全で快適な運転を実現する。
実際には、追跡型GPS発信機の他、歩行者や障害物を識別・回避する技術、先行車両を追跡するカメラ技術、走行中のクルマに取り付けられた各種センサーから
故障を事前に察知する技術など解決すべき課題はあります。しかし、未来の技術に見えても、実用化に向けて実験が重ねられ数年先には
実証実験も行われる見通しです。現在運用中の光ビーコンや既存の発信機と組み合わせる事で実用化も早まるかも知れません。
追跡型GPS発信機、各種車載センサー、道路上の光ビーコンや監視カメラ、ネットワークやクラウドといったIT技術が車両運行管理を
劇的に利便性の高いものにしました。利便性や効率向上のみならず緊急医療の分野にまでその影響は広大なものになりつつあります。
また、そのシステム導入に掛かる費用も今日の技術革新によって、より安価なものとなっています。以前は運行管理専用のサーバーの
設置が必要でしたが、より低価格なパソコンがとって代わり、さらにクラウド技術によって自社内にシステムを置く必要さえありません。
ネットワーク環境(有線・無線)さえあれば運行管理が可能な時代です。
クラウドを利用した実際の例を挙げると、東日本大震災後に通行可能な道路を調べるため、
車載ナビ(追跡型GPS発信機)の過去の位置情報(走行したルート)を追跡してクラウド上で集積し、走行実績イコール復旧した道路として公開しました。
これには、自動車メーカー業界やナビ業界など、様々な業界の垣根を超えたオールニッポンとも言える体制が採られました。
多種多様なクルマの走行情報から通行可能な道路の情報をいち早く公開する事によって復興を側面から援護したのです。
膨大な量の車両通行情報を処理し、震災後の復興事業に役立てた例です。
このように、車両運行管理は追跡型GPS発信機をはじめとするIT技術によって単なる追跡業務から、円滑な運行や走行予測、災害復興事業に
まで拡大・進化を遂げたのです。